いよいよアイスセーブ(Icesave)法案の法制化の是非を問う国民投票が2010年3月6日土曜日、明日に迫った。
アイスランド国内では海外の報道陣の受け入れ態勢などの準備が外務省で始まり、市民にはIcesave問題のルーツとなったランズバンキ銀行の破綻の顛末やらこれまでのIcesave協議の流れやら、一票を投じるための判断材料としてまとめた冊子が2日戸別に配布された。
国民投票までに最良の条件でIcesave問題に決着をつけたい、と、Icesave交渉団は最後の一瞬までがんばる決意でいまもロンドンに滞在しているけど、昨日の会議でも明確な結果が出なかった。どうもイギリスもオランダも様子見をしているみたい。
最新の世論調査では74%がIcesave法案に反対、19%が賛成、8%が白紙投票すると回答。このままでは、間違いなくIcesave法案は不成立。
先日アイスランドもどっさり雪が降ったらしい。古き良き時代の写真です
わからないことが2点
1.「No」といったらどうなるのか?
私にもわからない。借金を返済しない国として国際的な信用を失い、国の格付けが低くなる(すみません、このての話は暗いので)とか、IMFがお金を貸してくれない、EUに加盟したくても加盟させてもらえない、などなどの影響が憂慮されているようですが、ほんとうにそうなのかしら。
かなりの確立で、銀行の借金のために税金を払っている世界の人たちが、私もNoと言わせて!と思うに違いないことだけは、よくわかる。
2.どこまでの「No」なの?
アイスランド人がこの国民投票で「No」という結果をだすことで、この問題をどこまで白紙にするつもりなのか、私にはわからない。①Icesave預金者への補償金を税金で払うつもりは毛頭ないぞ。というメッセージを送るつもりなのか、②その気はあるけど、今の条件じゃ到底納得がいかない、というつもりなのか。国政の責任者は後者なんだけど、国民の気持ちとしては前者だと思うんですが。
世界がアイスランドに同情すること
イギリスの時事評論家(Matthew Lynn、Bloombergのコラムニスト)のコメントでは、アイスランド国民は「No」というと払わなければならない犠牲も多いけど、それでも言うべき理由が4つある、と語っている。評論家の言うことを鵜呑みにするのも危ないけど、気分が良かったので抜粋しました。
①アイスランド市民の責任ではない。なんで無責任な経済エリートの引き起こした混乱を勤勉な人々が始末しなければないのか、アイスランド市民が銀行を支援できないからといって責めることはできないだろう。
②Icesave預金者に緊急救済措置(bailout)を行ったのはイギリス・オランダ政府だろ。それ自体が問題(あとでアイスランドが返してくれるだろうからとりあえず国民をなだめておこう、と考えたのが甘かった?)。だいたい補償も含め営業を許可した責任は国にあるだろ。
③預金者はおばかさんだった。外国の高い利子の銀行口座に預金するにはリスクがあるのは当たり前だろう。(この人たちは、その預金を補償してくれたお金を返済することになるアイスランドの納税者(のほとんど)よりずっとリッチな人たちに違いない)。
④これは世界の問題だ。銀行のツケはほんとうに納税者が払うべきものなのか、世界中の為政者は考慮すべきことではないのか。
またイギリスのマスコミ関係者(Kevin Doran、イギリスのマスコミ企業)はアイスランド政府を非難。「なんでもっとマスコミを使ってアイスランドの願うIcesave合意について宣伝しなかったんだ」。イギリスにも善処する準備はあったはず。アイスランドがイギリスの要求を蹴ったということは大々的に報道されたが、アイスランドが何を要求したのか、何を思っているのかについてはほとんど報道されていないという。いきなりアメリカのアドバイザーをつけて、ケンカ腰だと思われてもしょうがないだろ、とも。
アイスランド人はあまり器用ではなさそうなのは認める。でも、私的なコメントなんだけど、ランズバンキ倒産でいきなりテロリスト国家として法的措置をとったイギリスって、もしかしてタラ戦争の恨みを引きずってない?そんな国がどうして黙って善処する気があると思われるか、おいこら。
「アイスランドは国際的義務を果たします」
アイスランド外務省が発行したアイスセーブ問題についての概況報告書(factsheet)は、この言葉から始まっている。そして、「政府はひきつづき全力でアイスランドの国際的義務を果たします」と締めくくられている。
私がアイスランドをえこひいきしているからだけなのか、なんとかアイスランドの本音を覚えておいて欲しいという誠意を感じる。国家の良心に反してことが進んでいることへの切ない思いを感じる。
ちなみに、Icesave問題で生じた負債は、イギリスで23.5億ポンド、オランダで13.3ユーロ、あわせて約53億ドル。アイスランドの2008年のGDPはIMFによると約175億ドル。2009年はマイナス8%の見込み。
独り言。天は何をアイスランドに語るつもりなのか、語らせるつもりなのか。
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