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6月17日はアイスランドの父、ヨーン・シーグルズソン(Jón Sígurðsson)の日

政局が混迷する中、選挙を迎える日本の私たちにも考えさせられる出来事で、選挙前に書かずにはいられなかったテーマです。アイスランドの建国の父と言われるヨーン・シーグルズソン(Jón Sígurðsson 1811-1879)について書いてみましょう。

Jon_sigurdsson_22010年6月17日、カナダのマニトバ州議会は今後この日をアイスランドの独立の指導者ヨーン・シーグルズソンの日として祝うことを承認しました。6月17日はアイスランドの建国記念日であり、1944年にデンマークからの独立を祝う日ですが、もともとこの日はヨーン・シーグルズソンの誕生日を記念して制定されたもの。

マニトバ州はカナダで最もアイスランド系カナダ人が多い州(3万人)でこの議案を提出した議員もその一人。それにしても異国の政治指導者を記念する日を州で制定するに到った理由が、ヨーンの政治指導者としての姿勢--不屈の精神と決断力で事を成すこと--は世界中の政治家のよき手本であるから、というのは、議決した議員たちのレベルの高さも伺えます。

ヨーン・シグルズソンの外交術はユニバーサルスタンダード

アイスランドがデンマーク王の支配下にあった1833年にコペンハーゲンに留学し、アイスランドの古文書のコレクション、アルナマグナイアン(Arnamagnæan)を紐解きその研究の一人者になりました。これはアイスランドの精神的国家的財産ともいえるサガの写本など、貴重な文献のコレクションでした。

デンマーク王の独裁に屈して支配下に落ちたのは1662年。しかし1948年にデンマーク王が独裁者の立場を放棄すると、ヨーンは正当な権利としてのアイスランドの自治権の返還を求めるようになりました。「デンマークに支配される前は、自由の民として義務と権利をもってノルウェー王をいただいていた」その権利を再び取り戻すべきだと主張しました。

ヨーンの闘う武器はすべて、学んだ歴史書の中にありました。論理的かつ紳士的に、しかし倦むことなく飽くことなく熱烈に、ことあるごとにその正当性を訴え続けました。それがついに聞き入れられ1874年に制限的に内政が許され、その数年後は完全な自治が与えられるようになりました。

天性の指導者

彼はいとこのインギビョルク・エイナルスドッテルと結婚するとデンマークに住まい、そこはまるでアイスランド大使館のようにアイスランド人のよりどころとなりました。

彼はアイスランドの国民会議アルシンギで議長を務めるために、1年おきにデンマークからアイスランドに渡り、生涯で29回往復しています。今のように飛行機がない時代、郵便船や貨物船でありとあらゆる天候が予想される春や秋に航海するのは、けして快適な旅ではなかったでしょう。そしてほとんど毎回妻が同伴していました。2人には子どもはいませんでしたが、すべてのアイスランド人が彼らの子どもだったと当代の人々は語っていたとのこと。

そして彼は誰からも好かれていたとのこと。お祭りや行事に誘わればだれよりも楽しそうにしているが、几帳面で勤勉で分別があり、王様にも小遣いの少年にも誰に対しても態度を変えることなく礼儀正しい人でした。そして、すれ違えば誰もがいったいこの人はどんな人なのだろうと思わせる高貴な風貌と物腰で、デンマークの指導者にさえ、この人の言うことなら正しいかもしれないという思いを抱かせたのではないでしょうか。敵であるはずのデンマーク人でさえ彼の専門分野といえば彼の為に喜んで便宜を図ったということです。

政治家が国民を育て、国民が政治家を育てるもの

かくしてヨーン・シーグルズソンは国家的ヒーローとして称えられ、彼ほどアカデミックな政治家はいないだろうと言われます。歴史を紐解いて国の行くべき道を探り、粘り強くその道をひらくために行動した、その生き様がアイスランド人の誇りになっています。

民主主義国家は国民が代表を選び、選ばれたものは選んだものにも責任がある--その考えは民主主義が成熟した欧米から多く学ぶものがあります。正しいことを貫き通し、その人がいうなら正しいに違いないと思わせる人、今はなかなかいませんが、そういう人を育て推す国民であらねばなりませんし、それに従う国民であらねばなりませんねぇ。

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